07.急に呼び方を変えてみる
最近ザンザスが冷たい。
否、冷たいって言うのかなコレは。
食事に誘っても仕事だからって断られるし。それが嘘だってことぐらい分かる。
だってここのところヴァリアーに仕事を与えてないしね。
・・・・・・ってことはあれ?まさか。
俺、避けられてる?
「・・・・・・!」
ザンザスは何かに反応して、顔を上げた。
ヴァリアーの屋敷、そして此処は執務室。今自分の身体を駆け巡った殺気。
「・・・・・気のせいか?」
いや・・・・・来る!!
ザンザスは扉の鍵を閉めようと椅子から立ち上がり、走った。
「ザンザスーーー!!」
「そっちかテメー!!」
窓ガラス大破。
今までザンザスの座っていた椅子とデスクの後ろにその窓はある。
暗殺者から狙撃されないよう(される前に勿論気付くつもりだが)特別製だったような気がするが欠陥工事かド畜生。
たった今乗り込んできた男に大破された窓を見ながらザンザスは思った。
「ザンザス!今日は改めて俺の想いをお前に伝えようと思います!!」
「作文!?つーか弁償しろよ綱吉」
そう、この男こそご存知我らがボンゴレ10代目だ。
恐らくは空を飛んできたのだろう。
彼の額にうっすらと死ぬ気の炎が消えかかっているのが見えた。
「ザンザス!俺とお前は恋人同士だよね!?」
「それがどうした」
「どうした、って・・・・!分かってる?もう俺達、こうして顔を合わせるのも久々なんだよ?」
「あぁ。どっかのカスザメがヘマをしやがったからな。おかげでうざってぇカス共を余分にかっ消すハメになった」
「・・・・・はい?」
目が点になるというのはまさにこのことだろう。
ザンザスは続ける。
「2週間前の任務でカスザメがターゲット以外の奴も殺しやがった。そいつが敵対ファミリーで、その仲間がウダウダとぬかしやがるからまとめてかっ消したまでだ」
「あ・・・・・・だから、それで・・・・・・」
「で、今その報告書を作っていたんだが・・・・・・何か文句でもあるか綱吉?」
「・・・・・・・ごめんなさい」
全ては俺の早とちり。
ツナが謝ると、ザンザスは深く溜息を吐いた。
「会えなくても、俺はテメェの恋人だ」
「愛してるぜ・・・・・・ツナ」
カァァア、とツナの顔が真っ赤に染まる。
近付いてきた彼の顔。
耳元で囁かれた言葉。いつもと違う呼び方。
「ザ、ザ、ザ・・・・・!!今・・・・!」
「あ゛?何だテメェ。ツッ君とでも呼んで欲しいのか?」
「ッ・・・・あぁもう大好き!!愛してる!!愛してるよザンザス!!」
10も違う年下に抱き締められる。ザンザスもほんのりと顔を赤くさせた――・・・・・・
「愛してるよザン君!!」
・・・・のだが。
ピタ、とザンザスの動きが止まる。
「・・・・・・あれ?何、どうし――・・・・・・」
直後。
憤怒の炎が爆発した。
「ただいま〜・・・・」
「お帰りなさいっス!10代・・・・・・めぇぇええぇえ!?」
ボンゴレ本部の屋敷に帰って来たのは我らがボンゴレ10代目・・・・・でなく、身体中に包帯をグルグル巻いたミイラ男だった。
「どっ、どうしたんスか10代目!?敵襲スか!?」
「うっ・・・・・!」
「お、帰ったか?・・・・・ってどうしたんだツナ?ハロウィンか?」
「うううっ・・・・!」
「うぁぁあああ絶対フラれた!!俺のバカヤロォオオオオ!!」
『は?』
奇声を上げて自室に駆け込む我らがボンゴレ10代目を見て、獄寺と山本は互いに顔を見合わせる。
だがツナは知らない。
憤怒の炎を直撃で受けたツナがルッスーリアの手当てを受けていた頃。
1人―――・・・・ザンザスが顔を赤く染めていたことを。
Thank you for reading.
written by skylark 08.2.27.